【コラム】『ブラック・ウィドウ』を初日IMAX初回で鑑賞した感想・解説・考察【マーベル】
マーベル・スタジオが贈る約2年ぶりとなる新作映画『ブラック・ウィドウ』を、公開初日7/8(木)のIMAX初回で鑑賞しました。
MCUフェーズ4初の劇場作品となった本作について、感想を書き残しておきたいと思います。
※本記事には映画『ブラック・ウィドウ』のネタバレを含みます。閲覧の際はご注意ください。
ネタバレなしの感想はこちら。
#ブラックウィドウを忘れない#感想キャンペーン
— スタジオ・ウォッチャー (@StudiosWatcher) 2021年7月8日
『#ブラックウィドウ』鑑賞。遂にMCUが映画館に帰ってきた。
ナターシャの過去を明らかにしつつ、シビル・ウォーとインフィニティ・ウォーの間の空白を埋め、エンドゲーム、そして更にその先へと繋げていく展開は見事。脅威のアクションシーンも必見。 pic.twitter.com/VobsHYLYpM
映画『ブラック・ウィドウ』
キャスト
スカーレット・ヨハンソン(ブラック・ウィドウ/ナターシャロマノフ)
フローレンス・ピュー(エレーナ)
レイチェル・ワイズ(メリーナ)
デヴィッド・ハーバー(レッド・ガーディアン/アレクセイ)
O.T.ファグベンル(メイソン)
???(タスクマスター)監督:ケイト・ショートランド
脚本:エリック・ピアソン
ストーリー:ジャック・シェイファー、ネッド・ベンソン
製作:ケヴィン・ファイギ, p.g.a.
製作総指揮:スカーレット・ヨハンソン
劇場に鳴り響く "マーベル・スタジオ・ファンファーレ"
まずはお馴染みのファンファーレと共に流れる「マーベル・スタジオ」のロゴムービー。
本作がフェーズ4初の劇場作品ではあるものの、今年に入ってからは『ワンダヴィジョン』『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』、ここ数週間は『ロキ』と自宅のテレビ画面で幾度も目にしたこのムービーも、やはりIMAXの高品質な大画面・音響でみると感動もひとしお。
既にこの時点で鳥肌がたっていました。
ファンファーレが始まりを告げると、場面は1994年のオハイオに。幼少期のナターシャ(ブラック・ウィドウ)は今とは異なり青髪なのも特徴的です(予告映像で既に目にしていましたが)。
妹エレーナや母メリーナとの関係も自然で、後にこの家族が潜入任務のための偽りものと明らかになっても信じられないような絆を感じました。実際、3年間を共に過ごした彼らにも表面的な家族以上の心の繋がりがあったのでしょう。
この幼い頃からナターシャとシールド(実際はヒドラ)に繋がりがあったことも興味深い設定ですね。過去にはシールドと敵対していたドレイコフの下で偽りの家族を持ち、その後はシールドの下でアベンジャーズという家族のような存在と出会う…。
父アレクセイの怪力にも気になっていたところ。後に明らかになりますが、ソ連初にして唯一のスーパー・ソルジャー、クリムゾン・ダイナモレッド・ガーディアンだそうで、しきりにスティーブ・ロジャースのことを口に出していましたが氷漬けだったので面識はないはず。今後の作品で何かが明らかになるのでしょうか…?それにしてもスーパー・ソルジャー多すぎでは。ウィンター・ソルジャー計画の超人血清と何か関連しているのかと勘ぐってしまいます。
タスクマスターの急襲とブダペスト
エレーナが追う謎のケースと赤い物質、そしてタスクマスターの動員と序盤から目白押しの展開でしたが、まさかいきなりナターシャのもとにケースとタスクマスターがやってくるとは衝撃でした。
タスクマスターとの戦いも、相手の動きを目で見てコピーする能力でキャプテン・アメリカらしい盾を使った戦闘と、その場でナターシャ/ブラック・ウィドウの動きを解析・模倣するという凄腕ぶり。ここ最近のMCUドラマの影響もあって実はアンドロイドなんじゃないかと思ってしまいました(アンドロイド、エイリアン、ウィザードのビッグスリーを思い出す)。
辛うじてケースの中身を守り切ったナターシャが向かったのはブタペストブダペスト。といえばクリント・バートン/ホークアイとの会話を思い出しますが、「私とあなたでは思い出が違う」はクリントがナターシャを殺しに来た場所だからだったんですね。矢の跡が残っているところも芸が細かい。
シールドとしての人生が始まった場所で半ば荒々しく妹エレーナとの再会を果たすナターシャ。『ウィンター・ソルジャー』のエレベーターでの格闘シーンといい、こういう狭いところでのバトルは、次はどうするんだ?と手に汗握るものがありますね。
休戦も束の間、ウィドウの軍隊がケースの中身の赤い反作用剤を狙ってきます。『エイジ・オブ・ウルトロン』でワンダに魅せられた過去にも、複数の少女が出てきていたことからウィンター・ソルジャーと同じ様にウィドウも一人ではなく軍隊の総称、ということなんですね。
そしてここで明らかになる黒幕ドレイコフの存在。ウィドウを替わりのきくただの駒としてしか見ていないあたりはかなり冷酷なヴィランですね。アベンジャーズに目を付けられないようにこっそりと世界中にスパイを送り込み支配しようとしているところもなかなかスケールの大きい、MCUの中でもやっかいなヴィランという印象。
家族の再会
シールド最終試験で娘を巻き添えに葬ったと思っていたドレイコフとウィドウ軍団の存在が明らかになり、レッドルームの壊滅を決めるナターシャ。これまでしてきた「赤い帳簿」に対する彼女なりの罪滅ぼしなのでしょうか。それにしてもここまで『アベンジャーズ(2012)』のわずかなロキとのやり取りを広げてくれたところには感謝しかありません。『シビル・ウォー』のスターク暗殺のときもそうでしたが、約10年ぶりの伏線回収を目の当たりにすると、MCUが生まれる時代に生きられる幸福を感じます。
レッドルームの手がかりを求めて向かった先は雪山の中の収容所。かつての偽りの父でありドレイコフと繋がりのあるアレクセイのもとへと向かいます。ここで雪山なのでホワイトスーツを身にまとう訳ですが、黒と白のコントラストがそれ以上の意味を持ってこの先まで続いていく演出は衝撃的でした。
アレクセイ救出の激しいアクションの後は、ドレイコフの居場所を知るであろう偽りの母メリーナのもとへ。ここでようやく家族が再会を果たし、アレクセイは(だいぶ無理をして)レッド・ガーディアンとなり、家族団らん…とは行かず、かつての潜入捜査の真実を知ります。
いわゆるヒドラとは異なる洗脳方法でウィドウ軍団を操るドレイコフ。タスクマスターが狙う反作用剤で洗脳が解けることがわかります。
レッドルーム(ほぼヘリキャリア)
そしてここでまさかのメリーナの裏切りによりドレイコフのもとへ連行される一同。レッドルームは雲の中に隠れているというラピュタ的展開と、実はメリーナの裏切りは嘘という2重スパイぶりは流石親子ですね。往々にしてこういう大事な話を父親は聞かされないものです…。
メリーナに扮してドレイコフと接触するナターシャ。そこで目にするタスクマスターの正体。それはかつてドレイコフ暗殺のために爆発に巻き込んだ娘が改造された姿でした。ここで彼女を倒すのではなくあくまで救けようとする姿はまさに "ヒーロー" でしたね。
スーパー・ソルジャーであるレッド・ガーディアンと互角以上の戦いぶり(とワカンダ・フォーエバー)を見せるタスクマスターの強さたるや。
エレーナの活躍によりウィドウ軍団は正気を取り戻し、飛ぶものは全て落ちると言わんばかりに墜落するレッドルーム。
爆発の衝撃で意識を失い宙に投げ出されるエレーナを救けに行くナターシャはまさにヒーローですし、それを追うタスクマスターはやはり悲しくもヴィラン。
何とか無事地上に降り立ち、反作用剤で意識を取り戻すドレイコフの娘。そしてこの一件で2つの家族がいることを実感するナターシャ。(ロス将軍は何やってるんだ全然仕事しないじゃないか)
ここからは個人的な推論ですが、やはりサノスの指パッチンでアレクセイ、メリーナ、エレーナは消失してしまったんじゃないでしょうか。そしてクリント/ホークアイの幼い子供たちには家族が必要であることを身をもって体験したナターシャだからこそ、ヴォーミアで自らの命と引き換えにソウル・ストーンを手に入れたのではないでしょうか。
ポストクレジットシーン
2023年、ナターシャの墓石の前に立つエレーナと、「彼女を殺したのはクリント・バートン」と吹き込むヴァルは『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』に続いての登場。
ここからドラマ『ホークアイ』に繋がっていくのか?と期待せざるを得ません。
そしてヴァルはアベンジャーズに敵対している?それともローニンとして人を殺めてきたクリントに罰を与えようとしている?エレーナもUSエージェントもいわゆるヴィランにはならなさそうなので、ここからフェーズ4がどう展開していくのか、非常に楽しみです。
*** 2021/7/11追記***
こんにちにおけるMCU
スカーレット・ヨハンソン、MCU初登場時のブラック・ウィドウは性的に描かれていたと語る
— 𝘿𝙄𝙕 🎥 (@DIZfilms) 2021年7月8日
https://t.co/7WTULA3PLg
本当に10年で女性の描かれ方が変わった。 pic.twitter.com/EHT5MX48Y2
マーベルスタジオズのプロデューサー、アレクサ・アロンゾも同内容の話をしている。『アイアンマン2』の時、ロマノフを見てスタークが「あれが欲しい(I want one)」というシーンがある。彼女はモノじゃないのにと思って嫌な気分になっていたそうだ。(この問題は当然このシーン特有のものではない)
— 光岡三ツ子 (@mitsumitz) 2021年7月11日
確かに『ブラック・ウィドウ』では一貫して、そしてあくまでも自然にナターシャをいわゆる“ヒロイン”ではなく“ヒーロー”として描いていました。 性別に対する考え方がこの数年で変わったからこそ生まれた素晴らしい作品。
そして性別だけではなく、黒人・アジア人等の人種への偏見・差別といった社会的な問題に切り込みながらも、各作品をエンターテインメントとして成立させているマーベル・スタジオには脱帽です。 それぞれの作品を通じて世界中の視聴者に課題意識を持たせ、より良い世の中の実現を目指しているのでしょう。素晴らしい試みで、これからも応援し続けたくなります。
映画『ブラック・ウィドウ』は2021年7月8日(木)より劇場公開中、7月9日(金)16時よりディズニープラス プレミア アクセスにて配信開始。